全社員に在宅勤務制度 富士通、3.5万人対象 回数制限なし

 富士通は28日、自宅などオフィス以外でIT(情報技術)を使って仕事ができる「テレワーク制度」を4月に導入すると発表した。本体の全社員3万5000人が対象。上司の許可があれば何回でも利用できる。国内では最大規模の導入となり、働き方改革が企業の間で一段と広がってきた。

(2017.2.28 日本経済新聞) 

このところ働き方改革関連の報道が連日続いていますが、今日は富士通が本体の全社員3万5000人を対象にテレワークを導入するというニュースです。今朝の日経の紙面には富士通のテレワークを推進するPCやタブレットの広告も出ており、自社の働き方改革をショーケースとして製品をPRする狙いもありそうです。

テレワークは、従来のオフィスにとらわれない働き方で、在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務があります。多様な働き方の一環で、育児・介護などの事情で従来型のオフィスワークが困難な労働者にも活用が可能な新しい働き方として注目されています。

ITを活用したテレワーク導入を、まずはIT製品メーカー自らが実践するという試み。働き方改革は法改正を待たずに民間からじわじわと広がりつつあるようです。

 

セブンのバイト欠勤に罰金契約 容疑の経営者書類送検

 愛知県警は23日、名古屋市北区のコンビニ大手セブンイレブン加盟店で、アルバイトが急に欠勤すると罰金を支払わせる契約を結んだとして、中国籍の夫婦で経営者の男(37)と店長の女(37)=いずれも同市中村区=を労働基準法(賠償予定の禁止)違反の疑いで書類送検した。

 労基法は、働けないことを理由とする違約金や損害賠償を支払わせる契約を禁止している。北署によると、2人は「急にバイトが休むと、自分たちが穴埋めをしなければいけない。自由な時間が欲しかった」と供述し、容疑を認めている。

 送検容疑は昨年9~12月、10~30代のバイト男女5人に「急に欠勤した場合は1回1万円の罰金を徴収する」との契約を結ばせた疑い。

(2017.2.24 日本経済新聞

先日も武蔵野市内のセブンイレブン加盟店が、病気でアルバイトを休んだ女子高校生にペナルティを課していたことがニュースになりました。代わりに働く人を探さなかったらペナルティ、というのはコンビニ業界ではある程度暗黙のルールになっているのでしょうか。

今日のニュースは、「急に欠勤した場合は1回1万円の罰金を徴収する」との契約を結ばせたことが悪質と見られたのか、書類送検にまで至っています。なお、このような行為は賠償予定の禁止を定めた労基法16条違反になります。(「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額の予定をする契約をしてはならない。」)

経営者の方から「欠勤をしたら罰金〇万円というルールにしたい」というご相談を受けることが時々あります。しかし、欠勤によって不就労となった時間の賃金カット以上の罰金をあらかじめ予定することは、上記の賠償予定の禁止に抵触します。さらに無断欠勤のような労働者に落ち度があるようなケースでなく、病欠のような場合にまで罰金を課すことは懲戒権の乱用とみなされる可能性が高いでしょう。

人手不足のいま、欠勤や遅刻に過敏になる経営者の気持ちも分からなくはありませんが、 法令違反があればすぐにSNS等で情報が拡散し、ますます人手不足を招くという負のスパイラルに陥ってしまいます。これまではとかく軽視されがちだった労働法令ですが、遵守して当然の時代が既にやってきています。

ヤマト、宅配総量抑制へ 人手不足、労使で交渉

 ヤマト運輸労働組合が2017年の春季労使交渉で初めて宅配便の荷受量の抑制を求めたことが22日、わかった。人手不足とインターネット通販の市場拡大による物流危機で長時間労働が常態化。「現在の人員体制では限界」として、要求に盛り込み、会社側も応じる方向だ。深刻なドライバー不足を背景に、広がるネット通販を支えてきた「即日配送」などの物流サービスにきしみが生じている。(中略)

 宅配便急増のきっかけはアマゾン・ドット・コムなど大手ネット通販企業の登場だ。アマゾンが会員制サービスを始めた2007年度の日本全体の宅配便取扱個数は06年度比1割伸び、初めて30億個を突破した。その後も拡大し続け、15年度は37億個に達した。

 日本の物流危機が深刻化した要因には、再配達などを当たり前に求める消費者意識もある。荷主や運送会社、消費者が現状に対する認識を共有し、改善策を見いださなければ、宅配サービスの瓦解も現実味を帯びる。

(2017.2.23 日本経済新聞

アマゾンなどのネット通販の普及で宅配便の取扱数は増加の一途で、トラック運転手には人手不足が生じています。運転職の有効求人倍率は2倍を超えており、人員確保が難しい状況です。記事によれば、組合の総量抑制の要求に会社側も応じる方向とのことですので、再配達や時間帯指定など、ドライバーの労働負荷を高めるサービスが見直しの対象になる可能性もありそうです。

宅配便最大手のヤマト運輸の方向転換は、我々利用者にも大きな影響がありそうですが、これまでの過剰とも言えるサービスは、ドライバーの過重労働に支えられていた現実を考えれば、多少のサービス低下は甘受しなければいけないのかもしれません。

先日、「携帯の販売店 営業時間短く」というテーマで、過剰サービスの廃止は今後のトレンドになるかもしれない、と書いたばかりですが、

携帯の販売店 営業時間短く - 流浪の社労士ブログ

さっそくその流れを受けたニュースが飛び込んできました。ここにも働き方改革の影響が表れていますね。

中小、春季労使交渉スタート 2つの逆風 攻防厳しく

ものづくり産業労働組合(JAM)は21日、春季労使交渉の要求書を提出、中小企業の賃上げ交渉がスタートした。強まる人手不足に加え、今年は政府の働き方改革で議論されている残業規制もあり、賃上げ余地の乏しい中小企業の経営者は厳しい戦いを迫られている。2つの「逆風」が吹き荒れる中、中小の労使の攻防は例年になく激しくなりそうだ。

(2017.2.22 日本経済新聞

先日開催された働き方改革実現会議で、残業の上限を月60時間、1年間で720時間に収めることとする政府案が示されましたが、既に長時間労働是正が浸透しつつある大企業に比べて、中小企業はなかなか長時間労働是正が進みません。

これに加えて、このところの人手不足も中小企業を直撃しています。2016年11月の有効求人倍率(季節調整値)は、1.41倍で、東京都に限れば2.03倍の超売り手市場です。この影響で三大都市圏のアルバイト・パートの平均時給は初めて1,000円を超えました。

大企業の長時間労働是正により影響を受けるのは下請けなどの中小企業です。これに人件費高騰が加わるとますます経営を圧迫することになり、中小企業にとっては厳しい春になりそうです。

雇用保険 対象を拡大 週20時間勤務で適用に 兼業や副業後押し

 厚生労働省雇用保険の適用を受ける人の範囲を広げる。いまは1つの会社で週20時間以上働く人が対象だが、複数の会社に勤務していても失業手当をもらえるようにする。兼業や副業で仕事を掛け持ちする労働者の安全網を手厚くして、柔軟な働き方を後押しする。来年にも国会に関連法の改正案を提出する。(中略)

 雇用保険に入るには同じ会社で週20時間以上働くとともに、31日以上の期間にわたって仕事をするのが条件となる。兼業で働く人がA社で週10時間、B社で週10時間働いても、保険の対象にならない。

 こうした仕組みは兼業や副業といった働き方が増えるにつれ、現状に合わなくなってきている。厚労省は複数の企業に勤めていても、合計の労働時間が週20時間を超えていれば、雇用保険に入れるように制度を改める考えだ。

(2017.2.21 日本経済新聞

社会保険(健康保険・厚生年金保険)には、労働者が複数の会社に同時に使用された場合に、それぞれの会社が支払う給与に応じて保険料を按分して負担する制度がありますが、雇用保険には同様の制度はありませんでした。

引用の記事によれば、複数の会社の労働時間の合計が週20時間以上になる場合は、雇用保険の加入対象とするよう法改正を行われるようです。雇用保険は失業時の所得補償を担う保険ですが、複数会社勤務の場合も加入対象となると、いずれか一方の会社のみを退職した場合でも「失業」とみなすのかなど、これから様々な論点が考えられます。

政府の進める働き方改革には、兼業・副業などの多様な働き方の推進もあります。今回の雇用保険の加入対象の改正はこれを後押しすることになりそうです。

残業の上限規制 連合に譲歩迫る

 政府が残業時間の上限規制に向けた調整で、連合に対する包囲網を築こうとしている。連合は繁忙期の労働時間の上限を月100時間とする政府原案では規制が緩いと反対しているのに対し、政府は上限規制の取り下げもちらつかせて譲歩を迫る。働き方改革実行計画をまとめる3月末まで政労使の駆け引きが激しくなる。

 加藤勝信働き方改革相は17日の記者会見で労使に対し「(計画に)具体的な中身が織り込まれるように努力してほしい」と述べた。安倍晋三首相は14日、労使で具体策を合意できなければ「(上限制を導入する)法案は出せない」と強調した。

 労使それぞれに歩み寄りを求めているようにみえるが、政府が強く意識するのは連合だ。連合は「月100時間の上限は到底あり得ない」(神津里季生会長)と強く反発している。経済界が条件付きとはいえ上限規制の導入を容認し、譲歩しているのとは対照的だ。

 そもそも上限制の導入は労働者に優しい政策を提言する連合の悲願だ。連合の反対で導入が見送られれば「連合自身のメンツがつぶれかねない」(政府関係者)。経団連榊原定征会長と神津氏は月内にも会談するが、労使間での協議は難航も予想される。

(2017.2.18 日本経済新聞

先日、残業の上限を月60時間、1年間で720時間とする政府案の記事を取り上げましたが、これに1カ月のみなら100時間までの残業を可能とし、2カ月平均で80時間を超えないように規制する案が追加される予定です。

この残業の上限規制の導入案について、経済界は概ね容認しているのに対し、連合が反対しているのですから驚きです。上限が月100時間では規制が緩いというのが反対の理由のようですが、現行法では残業時間は実質青天井なのですから、上限規制ができるだけでも大きな前進のはずです。

労働組合の推定組織率(雇用者数に占める労働組合員数の割合)は17.3%で、6年連続で過去最低を更新しています。引用の記事からも労働組合が現場労働者の意見を汲み取れていない実情が垣間見えます。長時間労働の是正はいまや労使の壁を超えて取り組まなければならない課題ですので、労働組合ももう少し柔軟な対応が必要なのではないでしょうか。

残業上限 月60時間 政府提示、労使受け入れへ

 政府は14日、首相官邸で働き方改革実現会議を開き、残業の上限を月60時間と定めた政府案を示した。1年間で720時間に収めることとし、繁閑に合わせた残業時間の調整を可能とする。会議に参加する労使ともに受け入れる方針だ。政府は労働基準法改正案を年内に国会に提出し、早ければ2019年度に運用を始める。(中略)

 働き過ぎの現状を変えるため、政府は労基法で残業の上限を定める。その時間を上回る残業をさせた場合は企業に罰則を科す。政府案は36協定の特例として、年間の残業時間を720時間、月平均で60時間と定めた。

 繁忙期に対応するための措置も今後検討する。仕事が集中する時期には月60時間を超す残業を容認。1カ月のみなら100時間までの残業を可能とし、2カ月平均で80時間を超えないように規制する案で最終的に詰める。100時間超の残業は脳や心臓疾患による過労死のリスクが高まるとされており、この数字は超えないようにする。

(2017.2.15 日本経済新聞

残業時間の上限についての政府案ですが、事前の報道通り、残業時間の1ヵ月の上限は60時間、年間の上限は720時間とされました。今回の政府案には盛り込まれせんでしたが、今後、繁忙期は1ヵ月のみならば100時間までの残業を可能とし、2ヵ月平均で80時間を超えないようにする、という案も追加されそうです。

月の残業時間が1ヵ月平均で100時間を超えた場合、または2~6ヵ月平均で80時間を超えた場合には、過労死リスクが高まることはよく知られています。この過労死ラインギリギリの残業時間の上限が報じられた際には、長時間労働を助長するなどの批判意見もありました。ただ、現在の法規制では、特別条項付きの36協定を結べば、残業時間は実質青天井のため、これにメスを入れた今回の政府案はかなり大きな前進と言えます。

現段階では政府案が提示されただけで、経過措置などの具体的な中身はこれから審議されますが、この残業の上限規制は早ければ2019年度にも運用開始とのことです。長時間労働は一朝一夕に改善されるものではありませんので、現在残業体質になっている企業は、数年先の法改正を見越して、早い段階から時短促進を検討する必要がありそうです。