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正社員との賃金差「不合理でない」 メトロ契約社員訴訟判決

 東京メトロの駅売店で働く契約社員ら女性4人が正社員との賃金格差が不当として、勤務先のメトロ子会社に差額分など計約4500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が23日、東京地裁であった。吉田徹裁判長は「給与や賞与、住宅手当などの格差は不合理ではない」として請求の大半を棄却した。

 判決理由で吉田裁判長は、売店で働く正社員は一部に限られ、契約社員とは業務内容や責任の程度、配置転換の有無が異なると指摘。「長期雇用を前提に、正社員の賃金や福利厚生を手厚くする会社の判断には合理性がある」と述べた。

 正社員との残業代の差は不合理と判断し、原告1人に約4千円を支払うよう会社側に命じた。

(2017.3.24 日本経済新聞

この事件は、2013年4月に改正施行された労働契約法の解釈を巡る裁判です。同法20条では、契約社員の労働条件について、有期契約であることを理由として正社員との間に違いがある場合には、①業務の内容及び責任の程度、②職務の内容及び配置の変更の範囲、③その他の事情を考慮して不合理なものであってはならない、としています。

労働契約法20条については、ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件など、昨年関連する重要判例が相次いで出ました。ハマキョウレックス事件は、一審では実費補てんである通勤手当の格差のみ不合理とされましたが、控訴審では、通勤手当のほか無事故手当、作業手当、給食手当の不支給も不合理と認めるなど、司法の判断も分かれました。

昨年末には同一労働同一賃金ガイドライン案が公表されるなど、非正規社員の処遇について世間の関心が高まる中、メトロコマース事件の判決が出ました。少額の残業手当を除き、基本給、賞与、退職金、住宅手当などの格差は不合理でない、とされました。

誤解の多い点ですが、そもそも労働契約法20条は同一労働同一賃金を定めた条文ではありません。上記①~③を考慮した結果、不合理でなければ正社員と契約社員で労働条件に差があることは認められています。今回の判決は、正社員と契約社員との労働条件の格差について、企業が長期雇用を前提とした正社員に対する福利厚生を手厚くし、有為な人材の確保・定着を図ることには合理性があると判断されました。

ただ、同一労働同一賃金ガイドライン案では、「基本給について、労働者の職業経験・能力に応じて支給しようとする場合、無期雇用フルタイム労働者と同一の職業経験・能力を蓄積している有期雇用労働者又はパートタイム労働者には、職業経験・能力に応じた部分につき、同一の支給をしなければならない。 」としており、今後この方針に基づいて労働契約法などが改正されれば、その後に同様の事件が起きた際には、また違った結果となることも考えられます。

有期労働契約の無期転換ルールの本格実施まであと1年となり、非正規社員を「雇用の調整弁」とする考え方は既に過去のものです。今回の判決は会社側勝訴の結果となりましたが、非正規社員の処遇については、従来の方法を見直さなければこれからの時代には対応できません。正社員と非正規社員との処遇の差について、明確な根拠を設けていない企業は、いつ紛争の当事者になってもおかしくないと言えるでしょう。