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労基署業務 委託に難色 厚労省「複雑な仕事」 規制改革会議

 政府の規制改革推進会議は16日、企業に立ち入り検査する労働基準監督署の業務の一部を民間に委託する検討会の初会合を開いた。民間委員は「監督官の不足で監督業務が不十分」と主張したが、所管の厚生労働省は「事業所の違法行為を見つけるのは複雑な仕事だ」などと難色を示した。同会議は6月の答申に委託解禁を盛る方針だが、調整が難航する可能性もある。

 会議では、民間委員が「監督が放置されている事業所に民間人が行くなど官民は補完関係にある」と指摘。「民間人が書類閲覧を拒否された事業所に国の監督官が集中的に行けば効率も良くなる」と強調した。これに厚労省は「監督官が来るまでに証拠書類を処分されたらどうするのか」などと慎重な姿勢を示した。

(2017.3.17 日本経済新聞

先日、規制改革推進会議で労働基準監督官の人手不足を補うため、労基署業務の一部の民間委託を検討する、というニュースを取り上げました。

労基署業務を民間委託 立ち入り検査 規制改革会議が検討 - 流浪の社労士ブログ

委託先は社会保険労務士を想定しているとのことで、私の周りでも、社労士の業務拡大かとかなりの話題になりました。

2016年4月から、全国の労働基準監督署による重点監督の対象が「月100時間超の残業が疑われる全ての事業場」から「月80時間超の残業が疑われる全ての事業場」に拡大されました。これにより、年間での監督対象数はそれまでの約1万事業場から約2万事業場に増加しました。しかし、監督官の人手不足は顕著で、全事業所に対する労基署の監督の実施率は3~4%にとどまっています。

監督官の人手不足を補完するため、労基署業務を民間委託することは有力な解決案と思われましたが、さっそく厚労省から横ヤリが入りました。「事業所の違法行為を見つけるのは複雑な仕事だ」などと難色を示したとのことです。

企業も労基署の調査にすんなり応じるはずがなく、違法行為をしていればそれを隠ぺいしようとする意図が働きますので、違法行為を見つけるのは困難だとする厚労省の意見はごもっともです。ただ、そのような企業の意図を良くも悪くも熟知しているのは、われわれ社労士です。

労基署は36協定や「長時間労働の抑制のための自主点検表」などで長時間労働が疑われる事業所を抽出していますが、そもそも本当に悪質な企業は36協定すら提出しておらず、労働者の申告がなければ、違法行為が潜在化してしまうのが実態です。そのようなブラック企業を駆逐するためには、労基署の監督の絶対数の増加は欠かせません。厚労省は働き方改革を推進する立場のはずですので、既存の手法にこだわらず、もう少し柔軟な発想があっても良いのではないでしょうか。