不当解雇の金銭解決制度 導入へ方向性見えず 厚労省、原案を提示

 裁判で不当とされた解雇の金銭解決制度の導入を巡る有識者会議の議論が、打開の糸口を見いだせないでいる。厚生労働省が制度の原案を示した3日の会議でも方向性は見えないまま。解雇を助長するとして連合は反対姿勢を崩さず、経済界も積極的に実現をめざす動きは今のところ乏しい。

 裁判で不当な解雇と認められた場合、解雇された人が望めば職場復帰を諦める代わりに会社から補償金を受け取れるようにするのが「不当解雇の金銭解決」だ。

(2017.3.8 日本経済新聞

不当解雇の金銭解決は、EU諸国など海外ではすでに制度化されています。日本でも10年以上前から検討されていますが、解雇を助長するなどとして連合が強固に反対する姿勢を崩さないまま、制度導入まで至らない状況です。

先日厚生労働省の示した原案では、従来のあっせん・労働審判・地位確認訴訟に加えて、労働者が職場復帰ではなく金銭救済を希望する場合に、地位確認にこだわらない金銭的解決という、新しい選択肢を設けようというものです。なお、地位確認訴訟とは、労働者が解雇無効を訴えて職場復帰を求める訴訟です。

解雇によって労使紛争にまで至っている場合には、多かれ少なかれ会社と労働者との間に感情的な対立が生まれているのが通常です。そのような場合に職場復帰にこだわるのは労使ともにあまりメリットがなく、初めから金銭的解決という選択肢が増えるのは会社側にとってもメリットがあるのではないでしょうか。

ITの進展等に伴い産業構造の変化は今後加速度を増すことが予想されます。一方、労働力人口は大幅な減少が見込まれており、限られた労働力を社会的ニーズの高い産業へ集中させるためには、柔軟な労働移動が可能な環境が求められます。解雇の金銭解決はその一助となるものであり、労組が主張するようなデメリットばかりの制度ではないはずです。今後の議論によってより良い制度ができることが期待されます。