残業の上限規制 連合に譲歩迫る

 政府が残業時間の上限規制に向けた調整で、連合に対する包囲網を築こうとしている。連合は繁忙期の労働時間の上限を月100時間とする政府原案では規制が緩いと反対しているのに対し、政府は上限規制の取り下げもちらつかせて譲歩を迫る。働き方改革実行計画をまとめる3月末まで政労使の駆け引きが激しくなる。

 加藤勝信働き方改革相は17日の記者会見で労使に対し「(計画に)具体的な中身が織り込まれるように努力してほしい」と述べた。安倍晋三首相は14日、労使で具体策を合意できなければ「(上限制を導入する)法案は出せない」と強調した。

 労使それぞれに歩み寄りを求めているようにみえるが、政府が強く意識するのは連合だ。連合は「月100時間の上限は到底あり得ない」(神津里季生会長)と強く反発している。経済界が条件付きとはいえ上限規制の導入を容認し、譲歩しているのとは対照的だ。

 そもそも上限制の導入は労働者に優しい政策を提言する連合の悲願だ。連合の反対で導入が見送られれば「連合自身のメンツがつぶれかねない」(政府関係者)。経団連榊原定征会長と神津氏は月内にも会談するが、労使間での協議は難航も予想される。

(2017.2.18 日本経済新聞

先日、残業の上限を月60時間、1年間で720時間とする政府案の記事を取り上げましたが、これに1カ月のみなら100時間までの残業を可能とし、2カ月平均で80時間を超えないように規制する案が追加される予定です。

この残業の上限規制の導入案について、経済界は概ね容認しているのに対し、連合が反対しているのですから驚きです。上限が月100時間では規制が緩いというのが反対の理由のようですが、現行法では残業時間は実質青天井なのですから、上限規制ができるだけでも大きな前進のはずです。

労働組合の推定組織率(雇用者数に占める労働組合員数の割合)は17.3%で、6年連続で過去最低を更新しています。引用の記事からも労働組合が現場労働者の意見を汲み取れていない実情が垣間見えます。長時間労働の是正はいまや労使の壁を超えて取り組まなければならない課題ですので、労働組合ももう少し柔軟な対応が必要なのではないでしょうか。