金銭払い解雇 導入争点 労働者側は助長懸念

 厚生労働省有識者検討会は30日、裁判で不当とされた解雇を職場復帰でなくお金で救済する「金銭解決制度」の導入に向けた本格的な議論を始めた。企業側からも制度の利用を申し込めるかどうかや、解決金の額などが主な争点となる。厚労省は議論を十分に重ねた上で結論をまとめる考えだが、解雇を助長するとして連合など労働者側は激しく反発している。

 30日の検討会では、厚労省が新制度について複数の検討事項を示した。一つが労働者が求めた場合だけでなく、企業側がお金による解決を望んだときも仕組みを使えるようにするのかどうかだ。

 もともと今回議論されている制度は、中小・零細企業でほとんどお金を得られずに、泣き寝入り同然に解雇される労働者を救済する目的が大きい。2013年には裁判で不当とされた解雇が約200件あった。

(2017.1.31 日本経済新聞

解雇問題についての司法の形式的な争点は「地位保全」の可否です。会社の主張を認めて解雇有効とするか、社員の主張を認めて解雇無効、すなわち会社に戻すかの判断がなされます。

ただ、会社から解雇を告げられた社員が、またその職場で働きたいというケースはむしろ少数派で、解決金によって和解するケースが多く、実務的には金銭解雇はすでに浸透しています。

様々な事情があるにせよ、会社に必要がないと判断された社員をその会社に留めておくよりも、金銭的に折り合いを付けて雇用関係を終了し、新しい職場で活躍してもらったほうが、労使双方にメリットがある場合も多いのです。

金銭払い解雇について論じると、労組などは必ず「解雇を助長する」と反発するのですが、もう少し柔軟な発想も必要で、労働力人口の減少が進む中、限られた人材を有効に活用するのは社会的にも意義があるのではないでしょうか。